.」group81˜94.展

.」group81˜94.展

2022.5.17(火)~29(日)休廊日23日(月)

12:00~18:00(最終日17:00)

 

最終展に寄せて

美術評論家の高橋亨さんと陶芸家の林康夫さんが企画され、2014 年に始まったこのグループ展は、昨年8 月に高橋さんが逝去されたため、今回が最終展となる。

高橋さんは、改めて紹介するまでもなく、的確な評論によって作家を応援し、現代美術の普及・活成化に尽力 された関西を代表する美術評論家である。そんな高橋さんが、最後まで手がけられていたのが、この展覧会で ある。

展覧会名は固定したものではなく、参加した三人の作家(あるいは高橋さんを含む四人か)の年齢が記され ている。例えば、2014 年に開かれた最初の展覧会は「group86/74/65」で、その後はそれぞれの数字が毎回「1」 ずつ増え、昨年の展覧会では「group93/81/72」となっている。

タイトルについて、高橋さんは「成長するグループ展」とされ、「過去を振り返る展覧会ではない」「作家が 歳をとることは、そのまま作品が歳をとることではない」などと述べられているが、作家たちもこの意を受け て毎回意欲的な新作を発表。林さんの「寓舎」シリーズや東日本大震災と福島原発事故で被害を受けた福島県 浪江町の廃屋に取材した近年の「浪江町の景」シリーズ、中馬泰文さんの自由な発想による「版」の可能性を探っ た軽やかで繊細な作品、木村秀樹さんの透明度の高いとぎすまされた独自の「スキージング」の作品、と三者 三様ではあるが、ベテランらしい個性的で完成された作品は、「ギャラリー揺」の親密で家庭的な会場ともよ く溶け合っていて、毎回拝見するのが楽しみであった。

ところで、このユニークなタイトルの展覧会には前史がある。2009 年に大阪・西天満に在った「番画廊」 で開かれたもので、高橋さんが企画され、林さんと中井克巳さん(1972 ~ 2013、平面・立体)・山中嘉一さん (1928~2013、版・平面)が参加したグループ展である。四人とも同世代で、満・数え年で 81 歳であったため、 「group 81」と名付けられ、2013 年の「group 85」まで続いたが、同年 10 月に画廊主の松原光江さんが逝去され、 画廊も 12 月末に閉廊。その間、中井さん・山中さんが相次いで亡くなられ、中止となった展覧会である。  今回は、高橋さんの追悼展になるので、林・中馬・木村の三氏の新作に加え、初期メンバーの中井・山中の 両氏のなつかしい作品が展示されると聞いている。

展覧会名は「 .」group 81 ~ 94」(period group 81 ~ 94)。「ギャラリー揺」でのこの充実した企画展が幕 を閉じることは、寂しい限りであるが、三人の作家たちがそれぞれの新しい場で、次なる作品を発表される日 が近いことを祈りながら、最後の展覧会を拝見したいと思っている。   三木 哲夫(兵庫陶芸美術館 館長)

林 康夫

1928 京都生まれ 1998 京都市文化功労者表彰 1999 京都美術文化賞 2022 京都府文化賞・特別功労賞

浪江町の景 ’22-1  H180×143×D1215mm  板作り 陶 2022

 

中井克巳

大阪府枚方生まれ 1927_2013 1957 鉄鶏会の結成に参加(以降6年間) 1959 第3回シェル美術賞展3等賞 1964_1996ミラノに在住 1973 第15回ミラノトリエンナーレ銀賞など受賞 2012 ミラノ、Pulcinoefante出版社 “7 Gennaio2012” 出版 2016 個展「Nakai:aperture」イタリア文化会館-大阪企画 2018 個展 ロンドン、ロンキーニ・ギャラリー

ひらく 80-60  375×300mm  Acrylic on Plywood  2007

 

山中嘉一

大阪市生まれ 1928_2013 1954_1957 デモクラート美術家協会 1972_2002 大阪芸術大学美術学科・浪速短期大学デザイン美術科教授 1999 デモクラート1951_1957「解放された戦後美術」(宮崎県立美術館/和歌山県立美術館/ほか) 2008 「点と面の詩情」上前智裕 山中嘉一 坪田政彦展(和歌山県立近代美術館)

「Exterior」エクステリア  415×325mm  Tableau・collage  Acrylic on Canvas  1986

 

中馬泰文

1928 京都市生まれ 2013 検証「現代美術の動向展」(京都国立近代美術館) 2022 「コレクション・五題」(西宮市大谷記念美術館)コレクション「た・び・て・ん」(兵庫県立美術館)

「Wardering walk2-12」POPEYE 379×288mm Papier collé  silk screen  computer techning  Inkjet printing  khozo paper/dhosa/gofun 2022

 

木村秀樹

1948 京都市生まれ 1874 京都市立芸術大学西洋学科専攻科終了 2020 「フォトグラフィック・ディスタンスー不鮮明画像と連続諧調にみる私と世界との距離ー」(栃木県立美術館)

Lattice on Grid4  300×220×20mm  Squeegeeing Acrylic on Canvas 2022